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平成26年10月2日開催 21世紀の健康づくりシリーズ 第64回「胃がん早期発見~ABC検診とピロリ菌~」3

      2016/01/29




基調講演 『胃がんを予防する ―ABC検診とピロリ除菌―』
明石医療センター副院長・消化器内視鏡センター長 吉田 俊一 氏


1:胃がん診療の現状
 近年では内視鏡検査の発達により比較的早期に発見される胃がんの割合が増えており、内視鏡治療や外科的治療で治ることが多くなってきています。しかし過去35年間、胃がん死亡者数は約5万人と横ばいであまり変化していません。胃がんで亡くなる方の8割は65歳以上の高齢者で占められており、進行した胃がんとして発見されるために救命できていない現実が見えてきます。

2:H.ピロリ菌と胃がん、胃の病気との関係
 1983年にH.ピロリ菌が胃の中に生息していることが証明されて以来、このH.ピロリ菌が多くの胃の病気の原因となっていることが明らかとなってきました。H.ピロリ菌は急性胃炎から慢性胃炎を引き起こし、胃・十二指腸潰瘍や胃がんを発生させます。慢性的な炎症が続く中で胃粘膜細胞の遺伝子に異常が起きて、胃がんが発生すると考えられています。

3:H.ピロリ菌とは何者?
 H.ピロリ菌は人間の胃の中に生息する「らせん状の桿菌」で、ウレアーゼ酵素活性(胃酸を中和する)や鞭毛(素早い運動ができる)を有しています。通常は胃粘膜を覆っている中性の粘液の中に生息しており、粘膜上皮に強く接着して病原性を発揮します。幼少時に口から感染して胃粘膜に慢性的な炎症を起こしていきます。H.ピロリ菌の証明には胃の粘膜を採取して行う検査(迅速ウレアーゼ検査など)と血液などの検体から行う検査(血清・尿中抗体検査、便中抗原検査、尿素呼気試験)があります。

4:H.ピロリ菌の除菌治療とその効果
 現在、保険診療で認められているH.ピロリ除菌治療法は3剤療法(胃酸分泌抑制剤1剤と抗生剤2剤)で、1週間服用します。1回目で治療できなければ二次除菌治療(抗生剤の変更)を行ないます。除菌成功率は80~90%とされています。H.ピロリ菌を除菌することによって慢性活動性胃炎が終息し、胃・十二指腸潰瘍の再発がなくなることが証明されています。これまでに胃・十二指腸潰瘍、胃マルトリンパ腫などが保険適応となっていました。

5:H.ピロリ菌を除菌すると胃がんにならない?
 H.ピロリ菌感染のない健常な胃粘膜からは胃がんの発生がほとんどないことはわかっていました。いくつかの臨床研究によって、H.ピロリ菌を除菌した人でも除菌していない人と比較して有意に胃がんになりにくいことが証明されました。ただし100%発生しないわけではないので、H.ピロリ菌除菌後も定期的な内視鏡検査を受けて頂くことが大切です。
 平成25年2月には「内視鏡で診断された慢性胃炎」に対するH.ピロリ感染症の診断と除菌治療が保険適用となりました。

6:今後の胃がん検診と胃がん診療の在り方
 胃がんは遺伝子の病気であり、H.ピロリ菌の感染によって引き起こされる感染症でもあります。感染症は予防することができます。したがって、胃がん対策は「胃がんになってから見つける」(二次予防)時代から、「胃がんの危険を予知して予防する」(一次予防)時代に入ったと言えるでしょう。胃がんリスク検診(ABC検診)とH.ピロリ除菌治療の組み合わせにより、胃がん発症の減少や内視鏡検査での早期発見による胃がん死亡者の減少効果が期待されます。

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